人のことなんて何もわからない。だから自分が『読みたいことを、書けばいい。』

コピーライター、プランナーとして勤めた電通を退職し、“青年失業家”と名乗りWEBメディアを中心に執筆活動を続けてきた田中泰延さん。今年6月に上梓した『読みたいことを、書けばいい。』は、Amazonランキング「本」総合1位を獲得し、16万部を突破しました。そんな泰延さんに新刊の取材をさせていただくことになりました。

読み返して面白いと自分が少し嬉しくなる、そんな気持ちで書けばいい。

──ライターの浜田です。今日は、泰延さんの本『読みたいことを、書けばいい。』についてお話を聞かせていただきます。

田中:はい、みなさんからの質問にまっすぐ答えますと……、カワウソとラッコは同じ動物だという話をしたいのです。僕はこの本の中で、一番大事なこととして言っているのは、科学的な正しい知識を持つことです。“カワウソ”が体長50cmを越えると“ラッコ”と呼ばれるんですよ。“ラッコ”が体長1mを越えると“ビーバー”と呼ばれて、これは全く同じ動物なんです。

──本当ですか?

田中:調べてみてください。

──わかりました。全く別物だと思ってました。

田中:カワウソは英語でオッター(otter)、ラッコはシーオッター(sea otter)と言います。同じ動物が海に出て行っただけなんですよ。本の中では、そのことの学術的な検証が8割です。

──……違いますよね?

田中:あとは、今日みなさんに言っておきたいのは、黄金の致死量について。黄金はよく一本食いとかいいますけど、一本全部食べると致死量に相当する場合があるんです。だから大事にする人は、冷蔵庫で冷やしてちょっとずつ食べる。あとチンして解凍するらしい。

──……いろんな話を聞けそうで楽しみです(笑)。

田中:ところでこの水は、ラベルを取っていますけど“いろはす”ですよね?

──はい、撮影するからラベルを取ったのですが……。
今日は予め取材依頼書をお送りした内容に沿って『読みたいことを、書けばいい。』の話をぜひとも聞きたいです。

田中:何でも答えます。

──ありがとうございます。 出版の話は気が乗らなかったと聞きました。泰延さんといえば、読み応えがあって面白いコラムを執筆されていてファンもたくさんいます。その延長線上で紙の本を書くことへは興味がなかったのでしょうか?

田中:これ今も、僕が嫌々しゃべってるのがよくわかると思うんです。僕はね、何もしたくないんですよ。基本的には家で寝ていたいし、しかもここにあるこの水は、ラベルを取っているけど“いろはす”なんですよ。あ、何の話でしたっけ?

──(笑)。
そうおっしゃっていたけれど、この本ができました。電通を辞められたときから「いずれ本を出そう」とか、そういう気持ちはなかったのでしょうか?

田中:何のために出すのかわからないですよね。出版社がお金を儲けるために出すのが本です。僕には関係ありません。

──ものを書く人として、自分の思想を広めたいとかなかったのですか?

田中:何のために?

──「自分の話を広く聞いてほしい」とか。

田中:思想はTwitterで雑談してるから十分ですよ。

──紙にしたい願望は全くなかったですか?

田中:紙になったら……、もし恥ずかしいことを書いたら恥ずかしいことが残るんですから、できるだけ避けたかった。みんなも気をつけた方がいい。書くってことは、恥ずかしいことですから。Twitterなら自分で消せますから。でも紙の本ができてしまったから、もう消せないですよ。そりゃえらいことです。

──確かにそうですね。

田中:あ、すみません。ちょっとお詫びのメールを送りたいので、少しお待ちください……。
(読み上げながら)
「いま6000字のお約束で40字ほど書けています。しかし、そもそも締切はあなたの都合ではないですか?」

どこに謝ってるかは、さすがに内緒にしておいてください。奈良新聞御中。

──(笑)。

田中:「今こうなってるから原稿が書けていないんだ」と謝るしかない。

──箕輪編集室の取材を受けていただいているから仕方がないですね。

田中:めっちゃ送信した。

──めっちゃ送信しましたか(笑)。

田中:はい、何でも質問してください。

──ええと、本ができた経緯です。電通を辞められる前から『街角のクリエイティブ』でコラムを書かれていたということですけど。

田中:もちろん嫌々です。

──とはいえ、そのコラムは多くの人に読まれていますよね。ニーズがあるからですよね。だから「自分が書いたものは、本になるはずだ!」と思いませんでしたか?

田中:ない。もう一度、これだけは言いたい。写真とか動画を撮ってるみたいだから、カメラに向かって言いたい。
僕は何にもしたくないんです。僕に何かしろと言わないでください。

──じゃあ本ができたことも、ヒットしたことも、本に書かれている言葉で言えば「文字がここに連れてきてくれた」というわけですね?

田中:最初に映画評を依頼されたときは、「一行でもいいから、一行書けば映画を観るくらいのお金は出してあげますよ」と言われました。だから書こうとしたけど、「一行って、それじゃあTwitterと一緒やん」と思って。どうせ書くんだったら、自分が面白いように書こうと。それで読者である自分が読みたいように書きました。だからニーズってわからないんですよ。

よく言うでしょ。最近は本もやっぱりニーズって言いますね。「どこにニーズがあるか」とか「このターゲットを狙え」とか。だけど今取材をしてくれている浜田さんは、隣に座っている奥村さん(ライター)が今夜何を食べたいかわかります?

(左:浜田、右:奥村)

──わからないです。

田中:わからないでしょ?  ということは同じ部屋にいる年も背格好も近い、性別も同じ人のニーズがわからないんですよ。だから人のことなんて、何もわからないんですよ。わかるのは自分のことだけなんです。

でも僕は、奥村さんがいま何を食べたいかわかってますよ。今日このあと天満の「源兵衛」のお肉を食べたいでしょ。

──食べたいです(笑)。

田中:ほら。だってそれは予約してるから。僕にはわかるんです。

でも冗談じゃなくて、広告を作っていた24年間は、人のニーズやターゲットの想定をずっとやっていました。例えば、新商品として水が出ますと。ターゲットは誰なんだと。年恰好はいくつなんだ、何歳くらいの男性か女性か、誰に売れるんだ、誰に売りたいんだということをずっと調査するわけですよ。マーケティングです。

で、「マーケティングから20代女性です」と聞いたら、僕らクリエイティブが「20代女性に売る水かぁ」と考えるわけです。20代女性だから、例えば「下る水です、便秘に効く!」と書くでしょ。でも本当に20代女性は便秘しているのか。本当のところは、僕にはわからないじゃないですか。

仮に奥村さんに「便秘ですか?」って聞いても、だいたい嘘を言うじゃないですか。

──さすがに、はい。

田中:でしょ? ということは、「人のことはわからない」という前提で、スタートした方がいいんですよ。

──そうですね、わからないですもんね。

田中:2020年にオリンピックがあるから、じゃあ2020年の7月に出したらヒットする本は、誰にターゲットを絞って何を書いたらヒットするって決められないですよね。当たるかどうかわからない。そう考えると僕が広告を作ってきた24年間は、ひょっとしたら無駄だったかもしれないと思い始めたんです。それが会社を辞めた理由の一つでもある。

みなさんも何かを書いて、自分が読み返して面白かったらちょっと嬉しくないですか?

──嬉しいです。

田中:それくらいでいいんじゃないかな、というのがその本の主張で、それを2~3行書いて残りはカワウソのこと。

──あれ?(笑)。

田中:あとこの水はラベル剥がしてますけど、“いろはす”ということ。

──はい(笑)。
スキルは違えど、私もWEBライターなので、この本に書いてあることはすごくよくわかります。文字で書いて儲けようと思うなら、他の事やった方が効率がいいかもしれないですもんね。

田中:そうですよ。この本はおかげさまで16万部突破して、ありがたいけど、でもそれって46歳で会社員を辞めたときの年収とそんなに変わらないんですよ、16万部で。ということは、毎年1冊10万部以上のベストセラーを出し続けないと会社員時代の年収を維持できないんです。定年60歳まで。そりゃ無理でしょ。

──来年もですか。

田中:はい、来年も再来年もその次も。だから本を書いて儲けるのは無理。ウハウハとは儲からないですね。

──泰延さんの本だから、これだけ皆さんに広がったと思うんですけど、私を含め一般的なライターだったら文字を書いて儲けようって大変ですね。

田中:儲からないですよ。

──そうですよね。書いて好きだからというか、書く人の気持ちというか、なんで書くのかっていうのをこれを読んで改めて考えさせられました。

田中:税金の話をさせてください。

──はい(笑)。

田中:おかげさまでこの本は16万部突破したけど、そしたら最高に近い税率が来るんですよ。所得税40%、住民税と健康保険を合わせたら5割以上もとられます。ここ何年かの収入の少なさと今年を平均するようにできるらしいので、それをやってもらうんですけどね。あ、今日は税務に詳しい人はいないんですか?

──いないです。

田中:その相談に来る会だと思ってたんですけど。

──違います、取材です。

田中:今日の最後は、僕が皆さんに一つずつ多宝塔を販売しますので。みなさんやっぱり生きてきていろいろ困難な事に当たるのは先祖の霊が祟ってると思うんですよ。みなさんの先祖の霊。これは僕が販売する多宝塔で根本的に供養することができます。多宝塔も三段、五段、七段、十五段、段を重ねるごとに霊の供養が強まっていくので。

──ほんまですか(笑)?

田中:皆さんには十五段とか二十四段とかをぜひ。まぁ、組み立て式ですけどね。

(一同笑)

田中:これ動画を撮っているんですよね? ご覧になっている皆さんも僕から多宝塔をぜひ購入して……。箕輪編集室っていうのは宗教法人ですよね?

──(笑)。
違いますが、そう思われがちな面もありますね。

田中:そうですか。これ以上宗教みたいというのはやめます。集団訴訟されるので。

──わかりました。大丈夫です。

田中:僕は宗教法人です。

──宗教法人。ひろのぶ党ですか?

田中:なんやねん、ひろのぶ党って。

──ひろのぶ党は、エアコンの設定温度は22度なんですよね。

田中:そう22度。今日は16度にさせてもらってる。

この記事に携わった人たち
<書き起こし>今井 慎也

早稲田大学4年 #箕輪編集室

<書き起こし>安里友芽

<書き起こし>原田美鈴

2018年5月より箕輪編集室

<書き起こし>佐伯美香

和歌山市在住のOL。普段は料理教室の企画運営、経理、労務を担当。フィギュアスケート、人の話を聞くことが好き。

<書き起こし>塩谷麻友

2018年6月より箕輪編集室

<インタビュー・編集>浜田綾

ライター、編集者。企業で10年ビジネス文書の作成→キャリア0からライターに→2017年開業、屋号は「コトバノ」。 #前田デザイン室 『#マエボン』『#NASU本 前田高志のデザイン』編集長。日本一のオンラインサロン編集者を目指す。セミナーもはじめました。アボカドのぬか漬けと明太子が大好き。ご依頼・お問い合わせはDMで。

<インタビュー・編集>奥村佳奈子

京都文化と着物が得意なライター/ビンテージ好きが高じて着物生活/編プロ在籍時はガイドブック・情報誌の編集ライター/初心者さん向け着物アドバイス/帯や足袋のハンドメイド / ブログ

<撮影>遠藤 稔大

写真集を制作しました。摂南大学経済学部 #10代さいごの写真集 でチェックしてね!依頼もお待ちしてます。写真集販売中!!下記のURLで見ることができます。/作りたいものがたくさんある♪ #リバイバル写真集 作ろうかな/メイクするの得意

<校正>小川絵里

ライター/活字中毒/ブックライター/美容ライター/ビジネスライター/コスメコンシェルジュ/お料理大好き/医療 、健康、美容の正しい情報を伝えます︎

<校正>ぺぺぞー

#箕輪編集室 #地球チーム

<校正>荒木利彦

製造業でシステム管理をしているサラリーマンです。「不安定な世こそバランスを」が座右の銘。バランスの取れたタメになるツイートを拡散するのが生きがい。文章の編集作業・ゲームが好き。

<動画編集>ナカニシワタル

<動画ディレクション>ばっし〜

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