人のことなんて何もわからない。だから自分が『読みたいことを、書けばいい。』

文章で名乗るのはアピールではなく自己紹介。堂々と自己紹介すればいい。

田中:こないだね、ほぼ日さんで、ちょっとライターさんの講義みたいのをやらせてもらって。

──「ほぼ日の塾」ですか?

田中:うん、「ほぼの日塾」。

──落ちました、2年前。

田中:あ、そうなの。俺も入りたいから一緒に受けようよ。あれは、めっちゃ勉強になるね。若いライターの人から「いろんな仕事を受けてるんですけど、泰延さんの場合は書き出しに“どうも田中泰延です”って自己紹介っぽいのが入ってるじゃないですか。僕はそれができなくて。なんでああいうことするんですか? 自分を売り込んでいるんですか?」って言われて。それは、違うと。
「文章って独り言やけど、誰か読みはる可能性があるから普通に挨拶しているだけなんやけど」って言ったら、すごい驚いてはって。「田中さんのキャラクターなら、それができるかもしれないけど、僕はちょっと……」っておっしゃるんです。

だから僕は「いや、カツセマサヒコを見てみ。彼も大きな印刷会社を辞めて、ライターでやっていこうかなってときに最初から“どうもカツセマサヒコです”って書いてるやないか」と。彼も挨拶しているんですよ、普通に。

だからね、みんなやったらどうですかと、なんか書くとき。“どうも浜田綾”ですと。

──わりと書いてます。可能なら綺麗目な写真も添えて。(ライター、浜田)

田中:そうそう。みんなそれやったらいいんちゃうかな。

──いや、でも排除されます。「こんなんいらん」って。(ライター、奥村)

──媒体によるかな。(浜田)

──下っ端ライターは、そういう仕事しかまだもらえない。(奥村)

田中:いや、「私が書いてるんですから私が自己紹介して何が悪いんですか!ここがいらないというなら、私じゃなくてAI(エーアイ)とかAI(アイ) とかに書かせれば……。(歌いながら)ひとりじゃない~から~」って言えば……、

──AIさんですね。それは。

田中:私がキミをま~も~る~から~

田中:と言えば、何とかなるんじゃないんですか?

──なんとかしてみます。

田中:だって、箕輪さんも編集者なのに「箕輪です。編集します」って言うでしょ。裏にいる人が表に出て矛盾しているようだけど、成り立ってるじゃないですか。

──そうですね。

田中:それでいいと思う。ちなみに箕輪さんとは去年の夏に箕輪さんが水道橋博士とリングで闘う直前に飲んだの。田端信太郎さんも一緒に。

──HATASHIAIですね。去年の8月です。

田中:箕輪さん、ワインをガンガン飲みながらも、すげえ殺気立ってて「とにかくブチのめしてやりますよ」って。「いやいやいや、もっと楽しく飲もうよ」って僕と田端さんとで爆笑してた。何を聞いてもね、「とにかくブチのめしてやりますよ」って言ってた。

──殺気立っていたんですね。

田中:そんな感じですね。
今って何人くらいいるの。田端編集。

──あ、箕輪……

田中:あ、田端じゃないわ。田端は田端大学だね。

──はい、今800人くらいです。

田中:800人! すごいやん!

──オンラインサロンで、毎月入れ替わりがあるので人数も変動しますけどね。

田中:その800人中、今6人くらい見てるんちゃう、生配信?

──今は3人ですね。もっと増やしたい。平日なので後で見る人もいるはずです。

田中:これ録画されるの?

──はい、残りますよ。

田中:恥ずかしい!何にもカットしないでくださいね。

──どっちなんですか(笑)。はい、もちろんカットしませんよ。

書く人が言葉の定義を理解していないと、読む人はもっと理解できない。言葉の精度を上げるには。

──本の話に戻りますね。この本には文書と文章の違いや随筆の定義など、言葉の定義の話がありますよね。この本に書かれているような文章の書き方に関する持論は、いつからあったんですか。

田中:それはもう大昔からです。お金を出して買った本でも、言葉の定義が最初と最後でズレている本って、いっぱいあるんですよ。うっかりしてる本とでも言えばいいかな。「これ意味合い違うやん」ってね。

言葉の定義をするときに、自分の言葉にカッコでくくったりとかして但し書きをつける書き方がありますよね。しかもずっとそれで最後まで押し通す本。でもそれは共通認識じゃなくて、その人の考えで使ってる言葉だから、相手にとって意味不明だと思うんです。

自分が言葉の意味をわからずに書けば、相手はもっと意味不明です。だから当たり前だけど、そういうときは辞書を引いて言葉の定義をはっきりさせる。
辞書を引いてもピンとこないときは、自分で定義を考えてみることです。

この本にも書きましたけど、趣味の定義って何だと思いますか?素直に答えてください。趣味って何ですか?

──楽しいと思えること?(ライター、奥村)

田中:あー、それも間違いではないけどね。でも苦しい趣味もあるからな。はい、では浜田さん。趣味って何ですか?

──あー…。好きなこと?(ライター、浜田)

田中:好きなこと。なるほどね。まあ嫌いなことは趣味じゃない。はい、ではあなた。趣味って何ですか?

──お金を稼がなくても楽しいこと?(配信、氷上)

田中:あのね、いろいろあるんだけど、今の3つの答えは趣味の一面なんだよね。俺、もっと考えていくと趣味ってなんだろうと思ったのね。例えば、飲んだ後のペットボトル集めてる人っているでしょ。

「飲んだ後のペットボトルを家で3000本溜めてます」っていう人がいたら、それは趣味なんです。そもそもペットボトルって何のためにあります?

──飲み物を入れるためですかね?

田中:うん。じゃあ飲み終わった後のペットボトルって、もはや用はないでしょ? ペットボトルは、飲み物を入れるという目的のための手段なんですよ。

でも単に手段であるペットボトルを集めたら、他人から「そんなもん3000本も集めて、変な趣味やなお前」って言われる。趣味になる。

ていうことは、手段と目的がすり替わってることが趣味なんですよ 。

──(一同)あー!

田中:つまり、ペットボトルは、水を飲むっていう目的のための手段なのに、その手段のペットボトルが目的化している。

こんな風に1つ1つの言葉に当たっていかないと、書いているときにわけがわからなくなってくる。

これも本の中に書いたけど、ある文章を書くときに俺、急に「幕府」ってなんやと。説明できない、みたいな状態になって。

そんで、絵解き日本辞典的な「英語で観光客に日本を説明しよう」みたいな、すごい簡単なイラストつきの本に、「Kamakura military government」と書いてあった。軍事政権。要は幕府は軍事政権なんですよ。

──あー。それを英語で聞いたら「あ、そっか」ってなるかもしれない。(ライター、浜田)

田中:こんな風に言葉の定義をしっかりしたら、自分が何を書いてるかわからなくなることがなくなるし、読んだ人もわからなくならない。という風に、僕は思っているんですよ。こういう行為が大事じゃないかなと。

──言葉の意味を1つ1つ調べたり定義を考える行為は、電通にいらっしゃるときからやってらしたのですか? それとも、もっと前からでしょうか?

田中:俺、思うんやけど、文章って、中高ぐらいのときに、かなりその基礎ができるんじゃないかな。そんときにたくさん本を読む。

そうしたら、いろんな人が使ってる言葉に触れる機会が増えて「この本とこの本で言葉の意味が違うってことは、 何か考え方のズレがあるんやろうな」ってことに気づくっていう。

だから若いときにいっぱい本を読めるといいですね。もちろん、大人になってからでもいい。ただ「私、本をたくさん読んでいます」って、年にビジネス書200冊とか読んでいる人がいたとして、それはちょっと違うかな。

手塚治虫の名言があってね、「漫画から漫画を学ぶな」って。

──確かに。(ライター、浜田)

田中:成功したい人が、成功できるための本を100冊読んでも成功しないですよ。

やっぱり中高大の時にいっぱい本読んどくといいんすよ。で、その時にいっぱい本読んでなかったっていう人は、慌ててビジネス本ばかり読まずに、クソ長い小説とか読んでみてください。ドストエフスキーとか。

浜田:おすすめは 。

田中:司馬遼太郎がおすすめです。長ければ、長いほどいいです。つまり、長く書いた理由があるから。うーん、そうなんですよ。

長いの読んだら、言葉に対する自分の精度が上がっていくんちゃいますかね。

「世界の名作」と言われていて、全二十何巻ある小説が、最初と最後で言葉の使い方
がでたらめだとしたら、世に残ってないわけですから。最後まで一貫してすごいってことは、きっちりしてんですよ。

──本をたくさん読んで、言葉について日々考えながら過ごしてきた経験が今に繋がっているっていう感じですかね。

田中:はい。まあ、それも屁理屈かもしれないけどね。

──いえいえ。

田中:僕ね、思うのよ。いろんな能力、野球が上手いやつ、足が速いやつ、生まれつき背が高いやつ、 顔が美しい人。それって大体生まれつきやと思うんです。

だって俺、今からどんだけ練習してもメジャーリーグの選手にはなれないし。

──うーん。確かに。

田中:ね。どんだけ整形しても、ファッションモデルにはなれないから。

──ふふふ(笑)。

田中:だからほとんどの事は生まれつき。でも、生まれつきっていうのはすごい大事で、生まれつき自分が何向いてるかを、見あやま……、

(遠くで泣いている声)これは誰が泣いてるの?

──猫? 子供?

(雷の音がする)

田中:あ、また雨降りそう?

ちょっと待ってね。
(慌ててパソコンを開く)

──(笑)。
雷は何か関係あるんですか?

田中:洗濯物を取り込まないと。おばあちゃんに連絡を。

(文字を打ちながら)おばあちゃん、洗濯物を……。

──大事なことです。ぜひ連絡してください。

田中:すごい大事。だってさ、洗濯干して全部濡れてダメになるって、人生の中で辛いことTOP3ぐらいに入るくらい辛いやろ。

──入ります。本当に辛いです。

この記事に携わった人たち
<書き起こし>今井 慎也

早稲田大学4年 #箕輪編集室

<書き起こし>安里友芽

<書き起こし>原田美鈴

2018年5月より箕輪編集室

<書き起こし>佐伯美香

和歌山市在住のOL。普段は料理教室の企画運営、経理、労務を担当。フィギュアスケート、人の話を聞くことが好き。

<書き起こし>塩谷麻友

2018年6月より箕輪編集室

<インタビュー・編集>浜田綾

ライター、編集者。企業で10年ビジネス文書の作成→キャリア0からライターに→2017年開業、屋号は「コトバノ」。 #前田デザイン室 『#マエボン』『#NASU本 前田高志のデザイン』編集長。日本一のオンラインサロン編集者を目指す。セミナーもはじめました。アボカドのぬか漬けと明太子が大好き。ご依頼・お問い合わせはDMで。

<インタビュー・編集>奥村佳奈子

京都文化と着物が得意なライター/ビンテージ好きが高じて着物生活/編プロ在籍時はガイドブック・情報誌の編集ライター/初心者さん向け着物アドバイス/帯や足袋のハンドメイド / ブログ

<撮影>遠藤 稔大

写真集を制作しました。摂南大学経済学部 #10代さいごの写真集 でチェックしてね!依頼もお待ちしてます。写真集販売中!!下記のURLで見ることができます。/作りたいものがたくさんある♪ #リバイバル写真集 作ろうかな/メイクするの得意

<校正>小川絵里

ライター/活字中毒/ブックライター/美容ライター/ビジネスライター/コスメコンシェルジュ/お料理大好き/医療 、健康、美容の正しい情報を伝えます︎

<校正>ぺぺぞー

#箕輪編集室 #地球チーム

<校正>荒木利彦

製造業でシステム管理をしているサラリーマンです。「不安定な世こそバランスを」が座右の銘。バランスの取れたタメになるツイートを拡散するのが生きがい。文章の編集作業・ゲームが好き。

<動画編集>ナカニシワタル

<動画ディレクション>ばっし〜

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