人のことなんて何もわからない。だから自分が『読みたいことを、書けばいい。』

書くことは今も昔も大嫌い。

──先ほどの話と一部重複しますが、書くことは好きではなかったということですが、それは昔からですか?

田中:書くことは、もう昔も今も大嫌いや。

──書いて楽しくしようみたいな感じには……。

田中:「楽しくしよう」っていうのは書くのが嫌いやから、楽しくしたくなるわけで。誰かに「書いてみてくださいよ」って言われると、「嫌やなぁ、約束しちゃった、エライこと言っちゃった。つまんねー、外で遊びたい、酒飲みたい、映画観に行きたい」って思うけど、まぁ、一応相手の都合とはいえ、約束を守る努力はする。
そのときに自分が「アホなこと書いてんな、俺」って楽しい状態に書いて持っていくためなんですよ。だから書くこと自体は一生嫌いやと思う。

──じゃあ小さいときから、「読書感想文得意でしたー!」とか。

田中:大っ嫌いでした。

──えー!? 意外です。じゃあもうちょっと大きくなって、なんか自分で小説を書いていたとかないですか?

田中:俺は創作に興味ないから。創作する人ってやっぱり「俺の歌を聴いてくれ!」ってことでしょ?

でも、そうじゃない文章って頼まれて書くものだから。で、創作だって面白かったら絶対ね、出版社が買いに来たり、大きい賞くれたりするんですよ。そうじゃない人は歩道橋で一人で売るのがいいと思う。

燃え殻さんを見てみ? 生まれて初めて突如長編小説を書いて、新潮社が買いに来て、それで本が出て、ベストセラーになって、今年の夏「新潮文庫の100冊」に入ってるんやで? 

──すごいですよね。

田中:そういうことやねん。それが、「向いてる」。でも燃え殻さんも書くの好きじゃないと思う。

燃え殻さんとよくLINEでやりとりしてるけど、エッセイも新しい小説も「血反吐を吐いてます、嫌です」とずっと書いてる(笑)。

──でも書いちゃうっていうのは?

田中:言われたからじゃない(笑)?

──ははは(笑)。でもその、書かざるを得ない衝動があるんだとかそういうのは……。

田中:それは“歩道橋”行きですわ。燃え殻さんは歩道橋に座ったことないはず。

彼の場合は、cakesの加藤さんに「tweetが面白いからなんか小説っぽいものを書いてみない?」って言われて書いてみたらあんな長くなった、っていうことですわ。

人に言われるんですよ。人に言われたこと以外はやっちゃだめですよ。

──あ、でもそれは確かに。才能って人が見つけてくれるという話をよく聞きます。
じゃあ、書くことは好きじゃないってことですね? ずっと好きじゃないと。

田中:だから、若い間で「書くのが大好きなんです!」って言う人いるやろ? それ大丈夫か、と思う。それは、ひょっとしたら君は“歩道橋”かもしれないよ? 

──歩道橋って言い方が……(笑)。わかりやすいですけど。

田中:もう、そういうやつは歩道橋や!
だって、「俺の歌を聴いてくれ」ってことでしょ? 「私の歌を聴いてくれ」ってことでしょ? それはもう歌われてもな…って。

会議とかで「はい!」って何か言ったら、「君の意見は求めてない」って言われる感じやろ(笑)。

──つらいやつですね(笑)。

田中:でもそこから依頼があるかもしれない。

──そこに自分の能力だったり才能だったりが隠れているっていうか潜んでいる。

田中:向いてれば。

──向いてれば。そうですね。

田中:そもそも「これやってくれ」って頼まれる時点で向いてる可能性はあるやん? 「やってみない?」って。

──そうですね。

田中:誰もさ、僕に100m走を走ってくれとか言いに来ないもんね。僕は短距離走に向いてないということが、最近わかった。

──最近ですか?

田中:うん、最近。オリンピックがあるけど「100 m走出るか?」とか言われない。
しかも大阪マラソンの参加証が届かない。

──届かないんですか?

田中:うん、応募してないから。重要なことに気がつきました、応募しないとゼッケンは届かない。

──(笑)。
先ほどの人から頼まれたことに可能性があるというか、才能は人が見つけてくれるという話その通りだなと思います。

田中:うん。例えば、歌手でもめっちゃ成功して大スターになってる人とそうじゃない人の違いは、歌は同じくらいうまくても、違いは、「お、こいつを使って俺も大金持ちになろう」と思った人がそばにいたかどうかなんですよ。

──そうですね。

田中:そう。だから、カラオケ歌いに行っても、「こいつレベルちゃうぞ」と思ったら言いますから、人が。そしたらレコード会社のやつが、「君、カラオケで評判になったらしいね」って来るから。

ただ、youtuberは最近ちょっと違うかなと思ってる。自分でやっていって、自分でゲットしてるのに、推薦人も買いに来る人もいなくても成り立ってる。それはやっぱ枠組みが新しいからやね。出版社もテレビ局も関係ないから。

──はい。そうですよね。

田中:あれはいいと思う。

──そうですね。
youtubeね。個人的なことですけど、うちには小さい子供がいるんです。youtubeが面白いのはわかるけど、他にも良いアニメとか名作が日本にはたくさんあるのに「なんでこれを見るかな?」と思うものを毎日見て……。

田中:え!? 浜田さん、お子さんいらっしゃるの?

──いますよ。

田中:「彼氏いんの?」って聞こうと思ったのに。

──あっはっは! またまたー。お上手ですね(笑)。

『読みたいことを、書けばいい』を日常に活かすテクニック。

田中:あのさ、今日一番大事な話をします。初めて会ったのに、「ねぇ、彼氏いんの?」とかおかしくないですか?初めて会ったのにそんなこと聞くのって。でも聞く方法をお教えします。客観視ってことです。

──ほう。

田中:えーと、何さんやったっけ? 

──奥村です。

田中:奥村さん。奥村佳奈子さんね? 初対面の奥村さんに、「奥村さん、初めまして。なぁ奥村さん、彼氏いんの?」ってこれ最悪でしょ?

──はい。

田中:ところが、客観視のテクニックを使うと聞けます。こう言うの。
「奥村さんさ、俺たち初めてじゃん? 初めて会ったのに、急に“彼氏いんの? 彼氏いんの? 彼氏いんの?”って聞いてくるやついない?」

──いますいます(笑)。(奥村)

田中:「で、彼氏いんの?」 

(一同爆笑)

田中:こう言えばいいんです。こうしたら聞けるから。

──(笑)。

田中:それは、「自分がこうやったら楽しくなる」っていうことをまずやってるからです。これこそ『読みたいことを、書けばいい』なんですよ。

「彼氏いんの?」って人に聞くのは、自分が情報を欲しいっていう欲望でしょ?で、相手にいきなり負担かけてるでしょ? これがだめ!

この場合は、もう浜田さんとか奥村さんという人にターゲットを勝手に想定して自分の欲しい情報を得て、しかも自分の利益になることを売り込もうとしてるわけ。

「あの、彼氏いんの? いないんだったら、ちょっと俺と今晩どう?」とか言いたいわけでしょ? これ、おかしいのよ。

──はい。

田中:そうじゃなくて、一回客観視して、面白い、自分が聞きたいような会話をはさめば笑いが起こり、「いやぁ、いますよ」とか教えてくれるわけですよ、笑いながら。

──うんうん…確かに(笑)。それって、泰延さんがずーっと小さいときからやっていたんですか?後天的にできる…。

田中:あ、それはけっこう盗むのよ、やっぱり。面白いことは盗む。

──ほう!

田中:例えばこないだね、僕がすごい尊敬してる写真家のワタナベアニさんていう人がいらっしゃるんだけど、その人が「先週、大阪の田中泰延のトークイベントに顔と体を出してきた」って言ってて(笑)。おかしいやろ?

そりゃそうやろ、顔だけ出すておかしいやろ(笑)。

──体もいりますもんね(笑)。

田中:面白いから「盗ましてください」ってすぐ連絡したけどね。そうやって集めるのよ。

──なるほどなるほど(笑)。

田中:うん、ワタナベアニさんが「顔と体を出してきた」って言うのは、まったく自分が読みたいから書いてるわけじゃない? なんの利益もないの、それ書いても。
でも、俺も楽しくなってるし、書いてる途中の本人も、そりゃそうだろなと思いながら書いてるから。これなんですよ、これが楽しくなるのよ。

──なるほど。そういうことをもうずーっとやってるから、それを文章でも書けてしまうっていうことでしょうね。

田中:もったいないからね。面白いことって、そんなにないから。新聞開いてみ? ギャグ1個も載ってないで?

──ないですよね。

田中:人が死んだとか、戦争があったとか、車にはねられたとか、ろくなこと書いてない。4コマ漫画だけでしょ? それもだいたい面白くない(笑)。

──確かに、そうですね(笑)。

田中:だから、面白いことは探しに行かないと。で、探したら、その人に「これ使っていいですか?」って言って使わせてもらう。

──そのデータベースが、すごく蓄積されてるんですね。

田中:基本的には、1回聞いて忘れないネタばっかりなんですよ。「小噺して」って言ったらするやつがいるんですよ。それうまいことやった小噺を、もう完コピすればいいんですよ。

──うん、確かに。

田中:言葉ってほんとは、著作権がないの知ってます? ナレッジに著作権あったらだめなんですよ、本来は。僕のこの本は一応値段ついてるけど、それ申し訳ない、僕も生活あるからもらいますけど、ほんとはナレッジって図書館行ったらわかるように、著作権とかお金じゃないんですよ。

なんでかって言ったら、じゃあイエス・キリストがみんなにありがたいお話をしました、ブッダがみんなにありがたい話をしました。
それでみんなが「あぁ、いい話を聞いた」ってみんなに広めるでしょ? 自分もそれを使って生活するでしょ? それに金が発生するか? っていうことですよ。

それと同じように、いい話はタダなんです。断りは入れなあかんことはあるかもしれない。「そのお話使わせてください」って。なんでもお金じゃないよ。

この記事に携わった人たち
<書き起こし>今井 慎也

早稲田大学4年 #箕輪編集室

<書き起こし>安里友芽

<書き起こし>原田美鈴

2018年5月より箕輪編集室

<書き起こし>佐伯美香

和歌山市在住のOL。普段は料理教室の企画運営、経理、労務を担当。フィギュアスケート、人の話を聞くことが好き。

<書き起こし>塩谷麻友

2018年6月より箕輪編集室

<インタビュー・編集>浜田綾

ライター、編集者。企業で10年ビジネス文書の作成→キャリア0からライターに→2017年開業、屋号は「コトバノ」。 #前田デザイン室 『#マエボン』『#NASU本 前田高志のデザイン』編集長。日本一のオンラインサロン編集者を目指す。セミナーもはじめました。アボカドのぬか漬けと明太子が大好き。ご依頼・お問い合わせはDMで。

<インタビュー・編集>奥村佳奈子

京都文化と着物が得意なライター/ビンテージ好きが高じて着物生活/編プロ在籍時はガイドブック・情報誌の編集ライター/初心者さん向け着物アドバイス/帯や足袋のハンドメイド / ブログ

<撮影>遠藤 稔大

写真集を制作しました。摂南大学経済学部 #10代さいごの写真集 でチェックしてね!依頼もお待ちしてます。写真集販売中!!下記のURLで見ることができます。/作りたいものがたくさんある♪ #リバイバル写真集 作ろうかな/メイクするの得意

<校正>小川絵里

ライター/活字中毒/ブックライター/美容ライター/ビジネスライター/コスメコンシェルジュ/お料理大好き/医療 、健康、美容の正しい情報を伝えます︎

<校正>ぺぺぞー

#箕輪編集室 #地球チーム

<校正>荒木利彦

製造業でシステム管理をしているサラリーマンです。「不安定な世こそバランスを」が座右の銘。バランスの取れたタメになるツイートを拡散するのが生きがい。文章の編集作業・ゲームが好き。

<動画編集>ナカニシワタル

<動画ディレクション>ばっし〜

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