
人のことなんて何もわからない。だから自分が『読みたいことを、書けばいい。』
1本のコラムを書くのにかける時間は?
──泰延さんが書くコラムは、基本的に長文で全部面白いんですけど、これ1つを書き上げるのにどれくらい時間がかかりますか?
田中:それがやばいねん(笑)。
エンタメ新党を二十何本やってるけど、丸2年かかってるということは1本1か月かかってるんだよね。
──いやでも、それだけ調べたらかかりますよね。
田中:調べに行くもん。それで専門家が見るから、嘘を書いたり調べが足らんことには絶対つっこみがくるから、それは恥ずかしい。僕もエンタメ新党二十何回の間に、本当にその道の専門家からつっこみがきたところはすぐに直してますよ。

──そうなんですか。
田中:うん、それは。Twitterで指摘された場合はTwitterでお礼言います。例えば、『シン・ゴジラ』のコラムを書くときに、天皇の話、つまり日本神話の中から、天羽斬剣とかね、それからヤシオリ作戦とか、全部古事記、日本書紀に出てくるものだから、それについて調べたつもりのことを書いたんだけど、ちょっと誤りがあった。だからすぐ指摘が来たから、その人にはTwitterで、「すいません。ありがとうございました。直しときます」っていって、本文もごっそり変えました。
──そのレベルから調べてたら、時間がかかりますよね。普通の人がそれをやろうと思うと、儲からないですよね。
田中:そう。だから、逆なの。僕は会社員をしながら原稿書いたし、それも実質原稿料なし。あ、でもゼロじゃないよ。いつも言うんだけど……金額でやらしいけど、原稿料は出ます。ただ映画を2回見て、パンフレット買って、サントラ買って、キネジュン(キネマ旬報)買って、「映画秘宝」買ったら終わり。足してください、その金額です。それを1ヶ月やる。でも、電通社員やから。
以前、糸井重里さんに「田中さん、どうするの?会社辞めて」って言われたときに、「いやぁ、書くことで食おうと思ってるんすけどね」って言ったときに、「田中さん、田中さんは会社辞めたんだったら、コンビニエンスストアかガソリンスタンドで働きながら、書いた方がいい」って、はっきり言われた。つまり、書いて食おうと思ってるんですよっていうのが、もはや根拠不明のサクセスストーリーなんですよ。
だから、ライターになりたいって思う人も、皆それなんですよ。書いて食おうってまだ書けてないのに、どうやってそれ値段をつけて売るんだ、っていう。だから僕は最初の2年間、1円にもなってないですよ、書いても。会社辞めてから。だから結局「書いて」って言われてから4年くらいは100円にもなってない。いや。100円にはなったけど(笑)。
だからこの本が出るまでは全くお金になってない。そういうことでいいんじゃないの。
──それでも書きますかって感じですよね。
田中:「書いて食う」っていうのはおかしい。
もしね、その人が今この時点で、「誰々さんからこれについて書いて、10万円くれって言われてるんや」って言ったらそれは、書いて10万円もらおうと思うんやっていうのはいいけど、書いて食えるなんて保証はないじゃないですか。
箕輪さんのところにこうやって集まってるっていうのは書店の方が多いの?書店、編集、ライター?
──いろいろですけど、やっぱり編集室なので、ライターはそこそこ多いと思います。とはいえ、写真とか動画とかいろんなの人がいますよ。(浜田)
──その、プロはそんなにいないですかね。その実際、ライターだけでお金もらってます、っていう人は、そこまで多くないですかね。(奥村)
田中:最後は箕輪さんをリングで倒してもらわないと(笑)。
──HATASHIAIで(笑)。
田中:箕輪さんをいつかぶっつぶしに……。怖いよお。
まずはこの、目つきの悪さ(笑)。

──おお(笑)。
田中:これ俺の撮った写真。この顔でね、ワインちびちび舐めながら、「水道橋博士、ぶっ倒してやりますよ」。でもね、それでも試合前だからこうなってて、試合の後は握手してね、それは清々しかったね、すごい尊敬した。
あ、田端、これは綺麗なジャイアンみたいでしょ。

田中:これは、俺のマイスイートハート・経沢香保子さん。

──楽しそうな会ですね。
で、これからは……、本がベストセラーになりましたし「高いんだぞ!」ってことなんですけど……。
田中:エクスペンシブ!
──エクスペンシブ!なんだけど、このペースで書いていくっていうのは……。
田中:全然考えてへん。だから、言われたことはやるけど、本は書かへんよ。だって、本の注文もないし。注文あれば考えるけど、その本を読んで、あの(編集の)今野さんが11ヶ月に渡って、ストーカーのようにつきまとったから本が出たんです、って書いてるから、ほとんどどこの編集者も誰も言ってこない。今、なんの話もない。
──コラムはどうですか?
田中:言われたからやる。イヤイヤじゃないですよ、奈良新聞さんも……。書きたい!すごい書きたい!
──でも1ヶ月くらいかけてみっちり調べて、書くっていう姿勢をこれからも貫くという。というか、調べてたらそうなるっていう。
田中:うん、調べてたらそうなりますよね。
──それをこれからも続けていくということだから……。
田中:だいたいめんどくさいことしか言って来ないですよね、言ってくる人は。「あれを読んだから、これについて調べて書いてください」って。ねえ、誰か「ポエムでいいです」とかないのかな。
「今の俺の気持ちは~、天駆ける鳩のような~」みたいなこと書いて。

──(笑)。
ここに書かれていることもそうだし、今日のお話もそうだけど、書く人は「書いて食べよう」っていうのは、それはそんなに簡単じゃない。しっかり書こうと思ったら、儲かることではない。でも好きで、楽しく書けるんだったら、書いたらいいんじゃない? っていうことですよね。
田中:そうなんです。
──箕輪編集室のライターたちにも何か言うとすれば、そういうことですよね。
田中:ボスはなんて言ってるの?
──ボスは……箕輪編集室はライターに限らずどんどん行動しよう、と。
圧倒的に行動して実践の数が多い人が成していくみたいな感じではおっしゃっていて。
田中:俺が次に本を出すなら、『言われたことだけやりなさい』と言うタイトルにする。
──いいですね。
泰延さんが仕事で会いたい人は?
──たくさんの方が田中さんに注目されていると思います。今後、お仕事で関わってみたい人はいらっしゃいますか?
田中:音楽業界の人かな。今、4回連続でいろいろと依頼を受けているのが、マキシマムザ亮君。今度もちょっと会うんですけどね。
ミュージシャンって「俺の歌を聴け」を本当にやってる人たちじゃないですか。そして、ダイレクトに観客とやり取りをすることがあって。
歩道橋じゃなくて、何万人の前で歌うということができている人じゃないですか。そういう人の話が聞いてみたいですね。それは面白そう。
──自分から「こういうの書いてみたい」っていうのはなく、全て依頼で来てるってことですよね。それが才能というか、向いてるってことですよね。すごいな。
田中:書きたい本とか、ないよね。創作する人じゃないから。その、浅生鴨さんとか燃え殻さんとか、最近よく飲みに行く、芥川賞作家の柴崎友香さんが言うんだけど、やっぱり彼らは「見える」っていうね。
じっとしてたら、キャラクターが喋り出し、映画みたいなものが上映されるから、「おおー、ちょっとちょっと待って」って、見えてるもの、聞こえてる声を書き留めていくっていう。
これはもう、一種の病気やからね。創作する人は。
やりたいっていうものじゃないと思うよ。そういう病気の状態から、見えちゃってる・聞こえちゃってる幻聴や幻覚みたいなものを一生懸命文字にする。
で、その見えてるものと表現との乖離があるから苦労するんでしょ。それは、病気との戦いですよ。
何にしても、タモリが言った通り、「やる気があるものは去れ!」ですよ。タモリがいっつもいうよね「やる気があるものは去れ」。
つまり、やる気のある人は、成功したいか、お金が欲しいんですよ。余裕がない。
成功すること、うまくいくことを考えてるから。
でもやる気のない人は周りを見回す余裕があるよね。あれが面白いから、調べに行こうかとか。山梨県にヒントがあるなら、山梨県に行ってみようかとか。それがやる気のない人。
やる気のある人は、東京のこのオフィスでどうやって一千万円儲けるか、必死で考えているわけでしょう。
──なるほど。
田中:嫌な奴じゃない?
合コンでもわかることやん。男女問わず、合コンに来て「今夜絶対、相手を見つけて、彼氏・彼女をゲットするとか、今晩やってやる!」と思ってる人って、嫌じゃない?ふらっと合コンに来て、なんか楽しそうな人いるっていう人の方が、好感持つでしょ。
やる気のある人は嫌い。「やる気があるものは去れ!」
──おお!今はコミュニティが成熟してきたから雰囲気は変わってるんですけど、箕輪編集室の初期の初期には「動かない者は去れ」というコピーがありました。
田中:はぁ。じっとしてても心臓は動いてますけど。これが止まった時が死ぬ時なんだから、誰だって十分動いてますよ。
動いてるのはね、アパレル業界くらいですよ。アパレル業界、わかります?(暴れている)あ、これ「アバレル業界」。
──面白い!
田中:あ、出たな。「誰々さん面白い!」これは俺いつも言うんですよ。誰かが何かやった時に「誰々さん面白い!」って「お前は審査員か」。一緒に暴れるか、別の「なになに業界」を持ってくるか。
よく言うんだよ。「超ウケる」って、審査員じゃないんだから。へえ!ボタン押さなくていいから。参加者でいいの。この参加する姿勢が、人生を楽しくする。審査員はあんまり楽しくない。審査員をやめろ。
「君、審査員をやめろ」

──わかりました。

ライター、編集者。企業で10年ビジネス文書の作成→キャリア0からライターに→2017年開業、屋号は「コトバノ」。 #前田デザイン室 『#マエボン』『#NASU本 前田高志のデザイン』編集長。日本一のオンラインサロン編集者を目指す。セミナーもはじめました。アボカドのぬか漬けと明太子が大好き。ご依頼・お問い合わせはDMで。

京都文化と着物が得意なライター/ビンテージ好きが高じて着物生活/編プロ在籍時はガイドブック・情報誌の編集ライター/初心者さん向け着物アドバイス/帯や足袋のハンドメイド / ブログ

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